中学受験から視野に入れるべき イマドキの大学入試の方式 <噂の「選抜入試」対策法>
今日は、イマドキの大学入試の方式、特に「選抜入試」について説明しますね。
大学入試って…、まだまだ先の話じゃないの?
確かにまだ先の話のように思われますけど、中学受験が終わったら、6年もしないうちに大学入試ですよ。
しかも、イマドキの大学受験は、約半数が年内入試で合格を手にしていて、これからもこの割合は大きくなると予想されています。
「偏差値に縛られて、ガムシャラに勉強して大学合格をつかむ」という勉強だけの一発勝負で大学に入る方法だけでなく、「将来を見据えて自分の特性を磨く」という充実した高校生活を武器に大学に入る方法もある、ということを前もって知っていれば、中学受験後の学生生活の指針が立つかもしれません。
あと、「総合型選抜入試対策④ 課外活動〈必見リストつき〉」のところはぜひ読んで欲しいです。中学生のときから自分の好きなことをして、しかもそれが大学入試に役に立つ場合があるんです。中学校選びにも役立ちますよ!
そうなのね。中学受験は通過点だけど、やっぱり大学受験が大きなヤマですから!
はい。では大学入試の枠組みから説明しますね。
大学入試の枠組み
「一般選抜」と「選抜入試」
下の図を見てください。
「一般選抜」というのは、高3の1月~3月に実施される入学試験です。
学力試験で決まる入試ね。私のときはこの方式が一般的で、推薦試験で合格する人はわずかだったわ。
そうですね。
そして、「選抜入試」というのが、高3の秋~冬の年内の入学試験です。この試験で合格する人の割合が5割を超えて、年々増えているんですね。
そうなんですね。選抜入試の試験科目は何ですか?
試験科目は学校によっていろいろです。主なものは、志望理由書、面接、小論文、指定の学力試験の中から2~3を組み合わせて実施されます。
くわしくは、「総合型選抜/大学・短大(短期大学)」で調べてみてください。
学校推薦型選抜入試
「選抜入試」には2つの種類があります。それは、「学校推薦型選抜入試」と「総合型選抜入試」です。
まず、「学校推薦型選抜入試」をみていきましょう。
「学校推薦型選抜入試」とは何ですか?
「学校推薦型選抜入試」は、前々から私たちが知る「推薦入試」です。評定平均値(高校3年間の全科目の成績を5段階で評価した場合の平均値)などを基準に合格者を決める選抜方法です。
学校長の推薦が必要だから、合格したら辞退できないってわけね。
その通りです!
そして、「学校推薦型選抜入試」には、「指定校推薦」(大学が指定する高校からのみ出願できる方式)と「公募制推薦入試」(大学が出す条件を満たし学校長の推薦があれば、どの高校からも応募できる方式)の2種類があります。
「指定校推薦」は私のときもあったわ。高校内の推薦枠に入れば、ほぼ確実に合格するんでしょ。
その通りです。
一方、「公募制推薦入試」には、「公募制特別推薦選抜」と「公募制一般選抜」があります。
「公募制特別推薦選抜」は評定平均値が出願条件となることはあまりなく、部活動で大会出場などの実績がある人におすすめです。
他方、「公募制一般選抜」は、国公立に多い、評価基準が厳しい、専願であることが多いため倍率が低くなる傾向があります。
総合型選抜入試
最後に「総合型選抜入試」ですが、これは以前「AO入試」と呼ばれていたものdすね。次のような特徴があります。
- 学校の許可がなくても出願できる。
- 一定水準の学力(各大学が実施する試験、共通テスト等の成績、英語の資格、学校の評定、活動実績など)が要求される。
選抜入試(学校推薦型選抜入試・総合型選抜入試)のメリット
「選抜入試」を受けるメリットは何ですか?
「学校推薦型選抜入試」は、高校3年間の成果(学業成績、課外活動、部活)が総合的に評価される(高校生活全般をコツコツと地道にがんばった人が勝つ)わけですが、その分、合格の可能性が高いです。
反対に、「総合型選抜入試(旧AO入試)」は、必ずしも合格の可能性が高いとはいえませんが、次のようなメリットがあります。
- 総合型選抜入試では、学力だけでない総合的な評価を受けるので、学力差をその他の活動で埋めるなどして難関大に合格できる可能性があります。
- 総合型選抜入試は、早ければ6月に出願がスタートし、10月初めに合格が決まります。そこで合格すれば、入学までの入学までの約6ヶ月間、自由に時間を使うことができます。この休みの期間を利用して留学に行ったり、インターンをしてみたりすることができます。
- 総合型選抜入試では「志望する大学にいく意味」や「自分の価値観や将来」について考えざるを得ません。そのため、大学に入学後のミスマッチを低減したり、卒業後の進路の満足度が高くなる傾向があります。
総合型選抜入試(旧AO入試)の具体的な対策
「学校推薦型選抜入試」は高校の先生と相談して決めることになりますので、ここでは、「総合型選抜入試(旧AO入試)」の具体的な対策を説明します。
英検対策は必須
まず初めに考えなくてはならないのは、英語です。英語の重要性は、次のように、年々高まっています。
- 小学5年、6年では、英語が正式な教科になっている
- 中学入試でも英語受験が増えている
- 都立高校の入学者選抜ではスピーキングテスト(ESAT-J)が始まっている→英検3級以上で対応可能
- トップレベルの高校や大学入試では英検2級で有利になる
- 難関大学ならば準1級で有利になる
なるほど、こんなに英語が重要だとは知らなかったわ。英語といえば「英検」だと思うんですけど、どのように対策すればいいんですか?
高3の夏までに「英検準1級」を取得するという目標を立てて、そこから逆算するのがよいですね。
あまり知られていないんですが、英検は1年間で最大9回受検できます。
えっ、4月~7月、8月~11月、12月~3月の3回じゃなかったですっけ?
英検S-CBTというものがあって、同一検定回内に同じ級を2回受けることができるんです。
例えば、第1回(4月~7月)の間に、従来型と合わせて3回受検することができるんですね。
ですので、1年間に、合計3×3=9回受検することができます。
英検の準1級といわれると「とっても難しい」と思われがちなんですが、受検回数を重ねると、自分に何が足りないかが分かるので、とにかく「受検→対策→受検→対策→…」を繰り返していけば、合格できちゃうんですよ。
へぇ~、そうなんですね。
あと一つ、注意が必要なことがあります。不合格だったときに、4技能のうち、得意な技能だけ対策しても再び合格することはできない、ってことです。
どういうこと?
総合型選抜入試対策① 大学側の期待と思惑
では本題。総合型選抜入試では、大学側の期待とか思惑を理解しておくことがとても重要です。
大学側が入学希望者に期待すること、ですね。
そうです。それを端的に言うと、大学は「入学希望者が卒業後のビジョン(何をするために大学に行きたいか)にこだわっているかどうか」をみています。
大学側としては、最低限4年間はしっかり通ってもらいたいと考えています。つまり、学生が退学などして卒業率が下がるのは最低限避けたいんです。
さらには、学生が卒業後、満足のいく進路に進めば、学生も大学も満足ですよね。大学にとっては、就職率をアピールできれば、入学希望者を増やすことを見込めます。
大学だって経営的な視点があるってことね。
そもそも、学生が持つ「ビジョン」って、大学が押し付けることはできません。学生自ら「ビジョン」を掲げて、大学生活を有意義に送ることが理想だ、といえます。
なるほど。でも「あなたの卒業後のビジョンって何ですか」って聞かれても難しいわ。
それはそうです、みなさん同じです。だから、早いうちからこのような問題意識をもっておくことが大事なんですね。
そこでもう一つ大事な視点があるんです。それは「自分のビジョンをその大学でしか達成できない理由」です。
面接で「なぜ本学を志望するのですか」って聞かれるやつね。
そうです。大学側とすれば、せっかく入学志望者の役に立ちたいと思っていても、入学希望者のニーズと合っていなければ意味がありませんから。
ですから、自分のビジョンらしきものが思い浮かんだら、それを達成できるような大学・学部を調べるようにしたほうがいいですね。
オープンキャンパスや体験授業などで「これだ!」と思えるような出会いがあれば、一歩でもビジョンに近づけるかも知れません。
総合型選抜入試対策② 何をするために大学へ行きたいか
総合型選抜入試対策には「ビジョン」が必要だと言いましたが、「ビジョン」にはレベルというか段階があります。少し長いですが、有名な「3人のレンガ職人」の寓話を引用しますね。
ある旅人が3人のレンガ職人それぞれに「何をしているの?」と問いかけます。この話に出てくる3人のレンガ職人は、3人とも『レンガを積む』という、まったく同じ仕事をしています。そしてそれぞれが下記のように回答をします。
(1)1人目のレンガ職人
「見ればわかるだろう。レンガ積みをしているんだぜ。朝から晩まで、ワシはここでレンガを積まなきゃいけないのさ。雨の日も暑い日も寒い日もどんな時も一日レンガ積みさせられる。日当なんて知れたもんだ。もう、心も体もボロボロになるわな。」
(2)2人目のレンガ職人
「オレは、ここで大きな壁を作っているんだ。これがオレの仕事でね。この仕事のおかげでオレは家族を養っていけると思うと嬉しいし、こんなありがたいことはない。」
(3)3人目のレンガ職人
「実は、私は歴史に残る偉大な大聖堂を造っているのです。ここで多くの人が祝福を受け、つらいこと・苦しいこと・あらゆる悲しみ・哀しみから解き放たれることでしょう。本当に毎日張りがあってワクワクドキドキの連続です。素晴らしいと思いませんか。」
1人目のレンガ職人は「特に目的はない」、2人目のレンガ職人は「生活費を稼ぐのが目的」、3人目のレンガ職人は「後世に残る事業に加わり、世のため人のために貢献することが目的」という感じね。
そうです。3人目のレンガ職人のようなビジョンを持てれば、それに越したことはない、ということですね。
後藤新平という人が「金を残す人生は下、事業(仕事や名誉)を残す人生は中、人を残す人生こそが上なり」とも言ってますね。
お金を残すことだって立派なことはないですか!
確かに! 私もそう思います。
ただ、子どもたちに誤解のないように言っておきたいことは、エライ仕事とそうでない仕事なんてない、ってことです。どんなつまらないことでも、心を込めて打ち込むうちに、何事も思うようにできるようになる、ってことです。
一時的な好き嫌いですぐに投げ出すようでは、社会では一人前ではありませんね。
確かにそうだわ。
話がずれました、元に戻しましょう。
総合型選抜入試対策として考えなければならないビジョン(何をするために大学へ行きたいか)は、大学を出た10年後に「どうなりたいか」を高校生のうちに真剣に考えることです。
実際にそうならなくてもいいんです。高校生のうちに、10年後の自分を考えることで、未来の自分と現在の自分のギャップは何か、それをどう埋めればいいのか、を考えて、今行動に移す。このことに意味があるんですね。
なるほど、何か元気が出るわ。
将来のことがさっぱりわからない小学生には、「決定版 日本の給料&職業図鑑」という本がありますから、一読されるとよいですよ。
総合型選抜入試対策③ 志望理由書
総合型選抜入試では「志望理由書」を提出しなくてはなりません。志望理由書は、後に続く面接試験で答える内容にもなるため、とても重要です。
面接官はすでに志望理由書を読んでいるから、面接で違ったことを言っちゃうとヤバいってわけね。
その通りです。志望理由書には、主に次のことを書きます。
- 大学卒業後の目標
- 目標を抱くようになった背景・理由
- なぜ、その大学・学部を志望するのか
- 入学後のプラン(どのような学習や活動で自己成長したいか)
「 大学卒業後の目標」は具体的にどのようなことを書けばいいの?
確かに、具体的に書くとなると難しいですね。多くの人は、社会問題に注目するといいかも知れません。
例えば、社会的弱者の問題とか、社会的取り組みがまだ不足していることとか、社会的取り組みを改善すること、などに目を向けるといいです。
イマドキの高校生の中には起業するエネルギッシュな人も出てきましたね。
そして、自分はどんな人間でありたいか、自分がどのように関われるか、どんな社会にしたいか、を考えるといいでしょう。
このようにして考えたことが、「 目標を抱くようになった理由」になります。
じゃぁ、「 なぜ、その大学・学部を志望するのか」は具体的にどのようなことを書けばいいの?
ここをまちがっちゃう人がいます。
例えば、「最先端の設備を備えている」とか「幅広い内容の講義やカリキュラム」とかは、具体的ではないため、志望理由にはなりません。
まず、「 大学卒業後の目標」から出発して、「自分がその大学でなければならない理由」(自分が大学を指名する理由)と「その大学が自分でなければならない理由」(大学が自分を指名する理由)を並べないといけません。
例えば、将来、国家公務員になりたいならば、その大学からの就職実績が高いとか、教わりたい教授がいるとかが「自分がその大学でなければならない理由」になります。
さらに、「その大学が自分でなければならない理由」として「この大学で学んだことを活かして、○○のような国家公務員になる」ということを書くとよいでしょう。
総合型選抜入試対策④ 課外活動〈必見リストつき〉
志望理由書には、課外活動を書くことがあります。課外活動には、部活動、クラブ活動、ボランティア活動、習い事、地域イベントへの参加、リーダーシップを発揮した経験などがあります。
課外活動は絶対書かなくてはいけないの? 課外活動には参加してこなかった人もいると思うけど。
中には課外活動をしていないという人もいますが、課外活動は社会に出たときに必要なスキルや人間性を養うことができると考えられていますから、中学生から高校生の間に課外活動には参加したほうがいいです。
学校外でどんな課外活動があるかは、下の表を見てください。あなたが行きたい大学が主催しているものや、国際的に活躍できるものもありますよ!
これらの受賞経験と英検準1級が合体すれば最強ですね。
分野 | プログラム名 | 主催/共催 | 国際性 |
総合 | 校外プログラム大全 | 校外プログラム大全 | 国際性あり |
政治社会問題 | 高校生未来会議 | 一般社団法人リビジョン | 国際性なし |
ビジネス/起業 | 高校生起業家講座NES | 一般社団法人リビジョン | 国際性なし |
小論文/文学 | 全国高校生小論文コンテスト | 慶應義塾 | 国際性なし |
日経星新一賞 | 星新一賞実行委員会 | 国際性なし | |
読書感想文全国コンクール | 全国学校図書館協議会 文学部志望の人にはおススメ | 国際性なし | |
数学 | 数学オリンピック | 数学オリンピック財団 | 国際性あり |
日本数学コンクール | 大阪公立大学数学研究所 名古屋大学大学院多元数理科学研究科 | 国際性なし | |
生物 | 高校生バイオサミット | 慶應義塾大学先端生命科学研究所 | 国際性なし |
生物学オリンピック | 国際生物学オリンピック日本委員会 | 国際性あり | |
化学 | 化学グランプリ | 公益社団法人日本化学会、名古屋大学 | 国際性なし |
化学クラブ研究発表会 | 公益社団法人日本化学会関東支部 | 国際性なし | |
物理 | 全国物理コンテスト | 物理オリンピック日本委員会 東京理科大学、東京工科大学、岡山大学 | 国際性なし |
地学/地理 | 日本地学オリンピック | NPO法人地学オリンピック日本委員会 | 国際性あり |
科学地理オリンピック | 国際地理オリンピック 日本委員会 | 国際性あり | |
科学技術 | 高校生科学技術チャレンジ | 朝日新聞社、テレビ朝日 | 国際性あり |
未踏ジュニア | 未踏ジュニア実行委員会 | 国際性なし | |
科学の甲子園 | 科学技術振興機構 | 国際性なし | |
坊っちゃん科学賞 | 東京理科大学 | 国際性なし | |
つくばScience Edge | つくばScienceEdge 2024実行委員会 | 国際性なし | |
情報 | 情報オリンピック | 情報オリンピック日本委員会 | 国際性あり |
電脳コンテスト | 東京工業大学、理化学研究所 | 国際性なし |
課外活動の経験をどのようにして書けばいいの?
はい、次の5つの視点で書くといいですよ。
- どのような課外活動か(組織の概要と規模、自分の役割)
- なぜ、その課外活動を行おうとしたのか
- どのように取り組んだか(他の人との協力関係、自分なりに工夫した点、挫折があればどのようにそれを乗り越えたか)
- 成果や結果はどうだったか(客観的に)
- この経験を大学生活でどのように活かすか
自分の好きなことに取り組んで、それが大学入試に活かせるなんてすばらしいわね!
総合型選抜入試対策⑤ 小論文
小論文は私の塾で得意の指導分野です。小論文は、文章を通じた主張や議論で、バランスのよい論理構成が大事です。
なんか難しそう…
いえいえ、決まったパターンがあるので、そのパターンにのせて書くだけです。
まず、課題文が与えられます。課題文は「主題→主張→理由→具体例」の4つから構成されているのが通常です。
その課題文について次の順序で論述していきます。
- 問題提起(何がどうして問題なのかを提示する)
- 自分の立場を明らかにする
- 自分がなぜその立場に立つかを説明する
- 問題提起に対する結論を示す
ほとんどの問題はこのパターンでいけるのね!
そうです。
指示語を使い過ぎない、段落変えを必ず行う、文体は常体で統一、1文を長く書き過ぎないなど、読みやすくする細かな配慮が必要なんですけれども、一番大事なことは、論理が一貫していることです。
採点していると、初めは肯定論をとっていたのに、結論では否定論になっちゃう人がいます。自分の主張が混乱しちゃうんですね。
そこで、書く前にしっかりと筋書を作っておく必要があります。大体、5通程度書くと、要領を得る人が多いですね。
そうなんだ、安心したわ。最近の大学入試がずいぶん変わってて驚いたわ。分からいことがあったら、また質問させてくださいね。
了解です! 分からないことは、下のフォームから問い合わせてくださいね。