中学受験のメリットを通して学ぶ 人生を豊かにする7つのスキル
<事例>
名前: 真理子ママ(40才)
職業: パートタイム勤務の事務職
家族構成: 夫と小学校5年生の息子
状況: 中学受験にはメリットがあると考えて、塾通いを始めた。息子が中学受験を控えているが、勉強よりもゲームを優先しており、塾の成績が伸び悩んでいる。
性格・特徴:
- 子供の教育に熱心で、息子の将来を真剣に考えている。
- 通常は忍耐強く、穏やかな性格だが、子供のことになると少し心配しすぎる傾向がある。
- 親としての責任感が強く、息子の学業成績に対しては特に厳しい面がある。
悩み・課題:
- 息子がゲームに夢中で、学業に集中していないことに頭を悩ませている。
- 塾の成績が停滞しており、このままでは中学受験に失敗するのではないかと心配している。
- 息子に勉強する習慣を身につけさせる方法を模索しているが、うまくいっていない。
- 夫ともこの問題について話し合っているが、解決策が見つからず困っている。このままでは、中学受験をするメリットがあるかどうかも疑わしい。
先生、真理子ママの悩みはよく聞く話だけど、いったい何が問題なの?
そうですね。中学受験にはメリットがあると考えて塾通いを始めたけれど、その経過でうまくいかなかった原因がいくつか考えられます。
お父さんにも、塾の先生にも相談していると思いますけど、納得がいかないときってありますね。お母さん、気持ちの持って行き場がないのは苦しいはずです。
自分の考えや気持ちが落ち着かない、こんなときはどうすればいいんでしょう?母親の方が参ってしまうかも知れません。
分かりました。中学受験のメリットを深堀りすれば、希望が見えてきますよ。
中学受験ならではのメリット7つ
まず、中学受験を経験することで得られるメリット7つを列挙しますね。その後、1つ1つ詳しく説明しましょう!
- 中学受験のメリット コミュニティの形成
- 中学受験のメリット 勉強への愛着と好奇心の養成
- 中学受験のメリット 問題解決能力の向上
- 中学受験のメリット 競争への適応
- 中学受験のメリット 自律的な学習能力の育成
- 中学受験のメリット 質の高い教育や進路選択の幅の拡大
- 中学受験のメリット 自己認識の深化
中学受験のメリット① コミュニティの形成
コミュニティの形成とは
同じ目標に向かって努力する仲間との出会いは、中学受験の大きなメリットです。共通の目標に向かって努力することで、友情が芽生え、協力し合う重要性を学びます。
コミュニティ形成の実態
中学受験のメリットとして、同じ目標に向かって努力する仲間って、大事なんですか?
大事なことですよ。一人でいると手を抜いちゃうけど、みんなががんばっている環境に置かれると、やらざるを得ないですよね。
もっと言うと、できる子たちはお互いに教え合うことがよくあります。
なるほど!教え合えるような仲間がいれば、モチベーションがアップしますね。でも、みんながみんな教え合っているわけではありませんよね。
そこが問題ですよね。子どもたちが言うところの「塾が面白い」というのは「仲間と会えるから面白い」ということなんですけれど、その中身をよく見る必要があります。
「仲間と切磋琢磨して成長できるから面白い」という場合もあれば、「友だちと勉強以外のことを話したり、じゃれ合ったりすることが面白い」という場合もあります。
前者は中学受験で得られるメリットですが、後者はメリットとは言いにくいです。
もし、「友だちと勉強以外のことを話したり、じゃれ合ったりすることが面白い」というだけで塾に通っているとすれば、そこに「友情」は生まれていませんから、「お互いに教え合う」ということもありません。ときには、生徒どうしでいさかいが生じることもあります。
コミュニティ形成ができていない場合
じゃぁ、塾に通っていても、孤立していたり、友だちと遊ぶ感覚でいる子どもたちはどうすれば、勉強に意識が向くようになるんですか?
「GRIT やり抜く力」(アンジェラ・ダックワース 著, 神崎 朗子 翻訳 、ダイヤモンド社)というベストセラーの本が参考になります。
この本によれば、「やり抜くためには、人の助けを借りる必要がある。親の助けが一番強力だが、それがだめなら適切な指導者を得たり、高い志をもった文化に属する必要がある。やり抜く力を身につける方法のうち、大変な方法は独力で頑張ること、楽な方法は同調性を利用すること。」とあります。
つまり、高い志をもった仲間がいる環境に恵まれないときは、親の助けや、適切な指導者の助けが効果的、ということだと思います。
中学受験のメリット② 勉強への愛着と好奇心の養成
中学受験を通じて、勉強が好きになり、好奇心を持続することができるようになることは、中学受験の大きなメリットです。興味深い教科やトピックに触れることで、学習への情熱を育み、自己啓発への道を開きます。
勉強への愛着と好奇心の養成
これは中学受験のメリットだとよく分かるわ。私が勉強苦手でしたから、子どもにはそうなって欲しくありませんから。
実は私、小学生のころ四谷大塚に通ってました。けど、入試の結果は全滅!
ですが、理科が好きで、ニュートンという科学雑誌を、親におねだりして読んでました。今でも発刊されてますが、今読んでも面白いですよ。
おかげで「なぜ〇〇なんだろう?」って疑問が浮かぶと、つい、分かるまで調べてしまうクセがつきました。
勉強が好きになれなくなるとき
でも先生、塾に通っている子どもの中には、「急に難しく感じ始めた」「勉強がイヤになった」という話を聞くんですけど…
はい、私もよく聞きます。小学4年生くらいまでは、勉強が好きな子どもの方が多いんです。「キミは勉強好きかな?」って聞くと、ほどんどの子どもが「はい!」って答えます。
しかし、小学5年生になるころから、勉強の質も量も格段に増えて、「自分から学ぼう」というモチベーションがガクッと下がってしまう子どもが増えてくるんです。
そうなんですか! 確かに、塾に通う日数も授業時間も増えたうえに、宿題も増えるわけですから、それは大変ですよね。しかも、小学校の授業と宿題もあるわけだし。
そうそう。それまでは「このままいけばきっと夢が叶う」と思っていとところ、その夢がノルマになって苦しくなっちゃう。
低学年のうちに好奇心をためこむ
だけど、「急に勉強の質と量が増えたことが問題だ」ということは、ハッキリしています。だから、それに備えればいいですよね。
何かいい方法があるんですか?
はい。ポイントはずばり「好奇心」です。好奇心があれば、多少の苦難は乗り越えられるはずです。急に難しくなるのは小学5年生からですから、小学4年生までに「好奇心」をためこめばいいんです。
私の塾でもやっていて、一番効果があるのは「飛び級」です。「飛び級」というのは、小学3年生から小学4年生までに、小学6年生の算数・国語・理科・社会をすべてやってしまう、ということです。
私の塾では、本格的な中学受験対策に入る前に、Gakkenの「全科プリント」(小1~小6)をやってもらってます。
効果は3つ。1つ目は、見やすくて使いやすいこと。テキストが好きになれないとその教科を勉強しようとは思えないんです。
2つ目は、自分の今の学年よりもどんどん上の学年に進むと、すごい自信自信がつきます。偏差値はほかの人ががんばると伸びない、つまり、偏差値だけを基準とすると自分がんばりが認められません。
しかし、自分の力だけこなせるものならば、やる気が出ます。実際、子どもたちは、喜んで先に進もうとします。
3つ目は、4科目を早く回せるということ。公文のように算数と国語だけでなく、理科も社会も一通り学ぶことによって、知識をため込む。そうすると、後々、「それ知ってる!」「それできる!」ってなるんですね。
そうなんですか! 何だか良さそうな感じですね。でも、親がこれを見てやらなければいけないんですか?
はい、そうです!実はそこがキモなんです。理科とか社会とかもマル付けしていただいて、やった内容を深堀りしていただきたいんです。
勉強したご褒美として、次のようなプログラムにお子さんを連れ出してあげて欲しいんです。社会で歴史に入ったら、歴史マンガでストーリーを学ぶことも有効です。
塾の進度に頼らず、興味があることはどんどん学ばせることが大事ですね。
- 親子におすすめ! 社会見学・社会科見学
- 探そう!全国の自然体験(環境省)
- DVD付 学研まんが NEW日本の歴史 (←DVDが本格的!)
早期教育で水泳とか英会話が人気ですけれども、「旅育」が最近見直されています。試験の点数だけが中学受験のメリットではなく、勉強の中身に子どもが感心を持ってくれることが本当のメリットかも知れません。
中学受験のメリット③ 問題解決能力の向上
中学受験の勉強は、複雑な問題を解決する能力を養います。数学や理科の問題を解くことで、論理的思考力が鍛えられ、日常生活や将来の職業で直面する問題に対しても有効な手法を見出す力が身につくことは、中学受験の大きなメリットです。
算数が得意になるためには「基礎体力」が重要!
なんか、難しい話になってきましたね…。いくら中学受験のメリットだとしても、苦しいことはいやだし。
大丈夫! かんたんに説明しますね。問題解決能力というのは、複雑にからみあった問題を、一つひとつ丁寧に解きほぐしていく作業です。
例えば、算数で難問といわれるものは、解答に至るまでの手順が何個もある、ってことなんです。よく「ひねる」っていいますよね。
ところで、次の計算で、□に入る数を求めることができますか?
$$ \frac{3}{5}\div\left\{1\frac{1}{7}-(1+\square)\times\frac{4}{9}\right\}=\frac{7}{4} $$いや…、ムリに決まってるじゃないですか!
ははは。ママは解けなくてもちろん大丈夫!
でも、中学受験生は避けては通れないんです。
よく「計算ミスがなくならない」って話をききますよね。この場合、算数の問題が「すぐに解けないとイヤ」って考えている子どもに多いんです。
しかし、模試や入試問題では、さっきの計算のように、何回か手順をふまないと正解にたどり着かないんです。
だから、算数が得意になるためには、思考の正確さと忍耐力が必要なんです。
なるほど! ササっと解けないと算数は面白くないと考えている子どもは、忍耐力もないってことなんですね。
そうなんです。だから、まず算数は基礎体力をつけるために、さっきのような□を求める計算を完全にできるようにしたほうがいいんですね。
そのためのテッパンの問題集は、超有名な「中学入試 でる順過去問 計算 合格への920問 四訂版」です。
これは小学校4年生までに終わらせると効果テキメンです。小学5年生になるころから、勉強の質も量も格段に増えますから、その前に算数の基礎体力をつけておくと、余裕をもって臨むことができます。
□のある計算を解くことは、1次方程式を解くようなものですから、これをカンペキに解けるようにするだけで、中学受験のメリットを手にしたと言えるのではないでしょうか。
中学受家のメリット④ 競争への適応
競争社会において成功するためには、競争に適応するスキルが不可欠です。中学受験を通じて、競争環境に慣れ、ストレス管理や目標達成のための戦略を学ぶことは、中学受験の大きなメリットです。
受験は競争だから、どうすれば競争に勝てるか、っていうことですね!いかに受験に打ち勝つかを知れば、中学受験のメリットといえそう。
そうです! 中学受験の先にも、いろいろな受験や試験があるから、とっても大事なスキルです。
そのメインは、ズバリ「ストレスとの向き合い方」にあります。
中学受験のストレスの原因
中学受験で子どもが強いストレスーを感じると、次のように、考え方、体調、行動に変調をきたすことがあります。
考え方 | ・ネガティブ(うしろ向き)になる ・投げやりになる |
体調 | ・頭痛、腹痛 ・だるい、眠れない ・食欲がない |
行動 | ・すぐ怒る ・集中力がなくなる ・髪を抜いたり、爪を噛んだりする |
そんなことになっちゃうんですか!かわいそう… どんなときに、このような不調になってしまうんですか?
主に4つの原因が考えられます。それは、
- 身体的疲労(多忙なスケジュール)
- 勉強の圧力
- 人間関係(社会的圧力)
- 受験の不安
です。それぞれ、原因別に対策法を見ていきましょう。
身体的疲労(多忙なスケジュール)がストレスの原因の場合
身体的疲労という場合、疲れをリカバリーできていない、つまり睡眠不足、ってことですね。
10歳から12歳の年令の子供たちの理想的な睡眠時間は約9~12時間だって、聞いたことがあるわ。
その通り。でも実際は、塾の勉強だけでなく、スマホでYouTubeを観たり、ゲームをやったりで、相当数の小学生が、寝不足で過ごしていることに気づいていない可能性があります。
「睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査の結果」(文部科学省、平成26年)によると、就寝時間が遅いほど、イライラする子どもの割合が高くなっているそうですね。
一般的に、寝不足があると、授業中の眠気を感じることが多くなり、情緒が不安定になり、集中力および記憶力が低下するので、成績が落ちる懸念があります。
このようなおそれがあるときは、最低9時間の睡眠時間を確保することを最優先にして、朝型の生活リズムを取り戻す必要があります。受験に勝ち抜くためにはまず、健康であることが一番です。
「勉強の圧力」がストレスの原因の場合
受験に勝ち抜くためには、「勉強したくない気持ち」に打ち勝つ必要があります。ですが、受験は、勉強が軌道に乗るまでが一番苦しいものです。
わかるわ。勉強しなきゃいけないって思えば思うほど、勉強以外のことに逃げたくなる…
現実はやっぱり厳しくて、勉強の不安は勉強でしか解決できないんです。
じゃあ、その厳しい現実にはどのように対処すればいいんですか?
まず、今の受験対策が自分に合っているかどうかを点検することです。
でも、塾に通っているから、それをきちんとこなしていけばいいんじゃないんですか?
それでついていける子は、ストレスを感じていないはずです。ストレスを感じている子どもは、いまの受験対策が自分に合っていないって、SOSを出しているんですよ。
まず考えていただきたいことがあります。塾の宿題って意味ありますか?
宿題を出してもらわないと、何をやっていいか分からないから、必要ですよ。
確かにその通りです! でも、塾に言われた通りに宿題をやれば、成績は上がりますか? 宿題が多すぎてこなせない、ってことはありませんか?
ん~(汗)
塾は宿題を出しますが、それを効率よく、いつ、どのように、どこまでやるか、をスケジューリングするのは実は家庭の問題なんです。
いやー、そんなこと、家庭でできますかね…
ここが中学受験の特殊なところなんです。
勉強にストレスを感じる子どもは、「宿題が多い」とか「理解できない」以前に、塾をどのように利用するか、どうすれば段取り良く勉強できるか、が分かっていないのです。
子ども自身が自分の学習をスケジューリングすることが難しいときは、その助けが必要です。
「理解していないのではないか」と疑う前に、「段取り良く宿題ができているかどうか」を見直していただきたいと思います。
ご家庭が子どものスケジューリングを手伝って成功した例は、「これが合格に繋がった!中学受験合格組が伝授する親サポート必勝法。全国偏差値60以上の中学校に通う保護者アンケート調査」を参考にしてみてください。
このアンケート調査については、 の動画で私が解説しています。
人間関係(社会的圧力)がストレスの原因の場合
人間関係からくるストレスって大人でもあるけど、子どもの場合はどんな原因がかんがえられるんですか?
人間関係はその人が置かれている状況によってさまざまですけど、主な原因としては、次のようなものが考えられます。
- コミュニケーションの問題: 親子間での意思疎通が不足し、お互いの考えや感情を理解しあえない場合があります。子供が抱える不安や恐怖、怒りなどの感情的な問題を親が理解しにくいことがあります。
- 情緒的な問題: 子供が抱える不安や恐怖、怒りなどの感情的な問題を親が理解しにくいことがあります。
- 教育方針の相違: 親が望む教育方針と子供の学びたい内容や方法が異なることが原因で対立することがあります。
- 過干渉や過保護: 親が子供の自立を阻害するほど過度に干渉したり、保護しすぎることがあります。
- 期待の重圧: 親の高い期待により子供がストレスを感じることがあります。
- 学業成績への焦点: 学業成績のみに注目し、子供の他の興味や才能を見過ごすことがあります。
- デジタルデバイスの使用: インターネットやゲームの過剰使用による問題が起こることがあります。
- 友人関係の問題: 学校や地域での親の友人関係の問題が家庭内のストレスにつながることがあります。
- 生活習慣の不一致: 食事、睡眠、運動などの生活習慣に関する親子間の不一致が問題となることがあります。
- 親の仕事と家庭生活のバランス: 親の仕事の忙しさが家庭生活に影響を与え、子供との関係に問題を生じさせることがあります。
- マウンティング・同調圧力による友人間の問題: 集団や友人となじめないが、不安だけれど誰にも言えないということがあります。
こんなに多くの問題があるんですね。何をどのように解決していけばいいんですか?
程度の問題がありますので、過度に神経質にならないほうがいいと思います。
ただ、生活に支障が生じてしまうと話がこじれてしまいますから、普段から、「相手の言いたいことを最後まで聞く」という態度を親子ともに持ち続けておく必要があります。
でも、絶対に解決したいと親が思っているときはどうすればいいの?
確かに「許せない」こともありますね。そのときは、数学の「定数」と「変数」を思い出してください。
y=ax+b (a,bは定数で、x,yは変数)
上の式で、a,bはすでに与えられているもので変えられません。これを「定数」といいます。私たちが生きていく環境のようなもですね。
これに対して、x,yは、ある条件の下であれこれ変えてみるもの、つまり「変数」といいます。
問題解決をするときに、「定数」を変えようとがんばるのは、とてつもなく苦労する割に、得るものが少ないです。
なるほど!「睡眠を犠牲にしよう」とか、「子どもや夫の性格を改善させよう」とかは、考えないほうがいいんですね。
そうそう! そのような視点で、上の10個の問題を見てみてください。
ちょっと話がそれるけど、人って良いところも良くないことも合わせ持って「人間」ですね。良いところだけだったら、それは「神」とか「仏」とか、もう人間味が無くなっちゃう。
子どもを見るとき、好ましくないところを直そうとするのではなく、良いところを伸ばそうとすれば、早く、円満に、真っすぐ成長してくれると思います。
受験の不安がストレスの原因の場合
今思い返してみても、受験生のとき、「合格できななったらどうしよう」って不安はヤバいものがあったわ。
ですよね。私も合格発表のその日まで、ドキドキしてましたよ。
受験の不安はどうやってやわらげればいいんですか?
その前に、受験の不安はしっかり受け止めなければいけない、ということが必要です。
子どもの中には、「まっ、受かっても落ちても、どっちでもいいや」って思っている子がいます。そのような場合、中学受験のメリットって少ないですよね。
そんな考えの子どもっているんですね。
はい、いるんです。そのような子どもには、まず、受験はどのようなものかを知って欲しいですね。つまり受験というのは、
- 受験は「他人との競争」でもあるけれど、「自分との競争」でもあるということ。だから、ごまかしは通用しない。
- 与えられた時間はどの受験生も平等だということ。だから、時間の使い方がとても重要になる。
このことをしっかり頭と心に刻むと、受験に対する姿勢が変わるはずです。
受験に対する姿勢が真剣なあまりにストレスを感じたとき、それをどう和らげるかが、ここでの問題です。
そうか! 受験が「自分事」に感じられるからこそ、ストレスを感じるんですね。
はい。では、受験の不安をどうやって和らげるかが問題ですね。
この記事の最初のところで、「GRIT やり抜く力」(アンジェラ・ダックワース 著, 神崎 朗子 翻訳 、ダイヤモンド社)というベストセラーの本を紹介しました。
その中に、次のようなことが書かれています。ちょっと長いけど、引用しますね。
「やり抜く力(GRIT)」というのは、Guts (根性):困難に立ち向かう力、Resilience(回復力):失敗してもくじけない粘り強さ、Initiative(自発性):自ら取り組む積極性、Tenacity(執念):最後までやり遂げる力である。
能力がある人に比べて自分は劣っていると考えて、とても自分にはできないと言い訳して現状に甘えてはいけない。
まず第1に、やり抜く力を発揮するためには、「人間は何でもやればうまくなる」「人は成長する」という成長思考を持つことが出発点である。脳は筋肉のように鍛えることができる(学習性勤勉性)。この研究の重要な結論は、「努力と報酬の関連性は学習することができる」ということ。
そして第2に、楽観主義的に考える練習をする必要がある。
Q)次の状況を想像してください。(「楽観主義」か「悲観主義」かがわかるテスト)
人からやって欲しいと頼まれた仕事がありますが、全部終わりそうにありません。では次に、その主な原因をひとつ想像してください。どんな原因が頭に浮かびますか。
悲観主義者は、「自分は何をやってもダメだから」「意気地なしだから」といった「永続的」原因を挙げる。しかも、「不特定的」であり、仕事の能力だけでなく、ほかのさまざまなことにまで及んでしまう。この結果、小さな失敗を取り返しのつかない大失敗のように感じてしまう。
楽観主義者は、「時間配分を間違えた」「効率的でなかった」「計画がうまく進まなかった」のように「一時的」で「特定的」な原因を挙げるので、「どうにかできる」と思える。
テストの中の「人からやって欲しいと頼まれた仕事がありますが、全部終わりそうにありません。」の部分を「重要な模擬試験があるのですが、その対策が終わりそうにありません。」に変えて、子どもに質問してみると、悲観主義か楽観主義かが分かりそうですね。
大事なことは、受験の不安はだれでも感じるものですが、「どうせできない」と考えると不安は大きくなり、「勉強不安は勉強でしか返せない」と腹をくくれば不安は小さくなる、ということです。
あと、決意しても、決意に酔っているだけでは何も変わりません。「やらなきゃ」と思いつつ「やらない」と、結局、ダメな自分を肯定してしまうという矛盾に悩むことになります。毎日勉強に取り組むことが、一番ラクな勉強法なんですね。
自然に自分から行動を起こすことができるようになれば、まさに中学受験のメリットだと言えるでしょう。
他人と過去を変えることはできませんが、自分と未来を変えることはできます。努力する人は希望を語り、怠ける人は不満を語る(井上靖)。
中学受験のメリット⑤ 自律的な学習能力の育成
中学受験は、子供たちに自主性と自律性を教えます。時間管理や計画の立て方を学ぶことで、効率的に目標を達成するための能力が育つことは、中学受験の大きなメリットです。
家庭学習計画表〈ダウンロード〉
中学受験では、小学5年生になるころから、勉強の質も量も格段に増えます。このころから、家庭学習を計画的に進めないと、ダラリの法則(ムダ・ムラ・ムリ)に支配されてしまいます。
ここで登場するのが、家庭学習を計画的に進める、ということです。
でも、どうしたら上手に計画を立ててるか分からないわ。
そうだと思って、「家庭学習計画表」を準備しておきました。ここからダウンロードしてください。
家庭学習計画表【見本】.pdf (347 ダウンロード )
家庭学習計画表.pdf (335 ダウンロード )
この「家庭学習計画表」はどのように使ったらいいの?
【見本】を見てください。3つのポイントがあります。
- 2週間ごとに微調整すること。
- まず、子どもに作らせてから、保護者か先生がチェックすること。
- 実行後に、フィードバックすること。
まず、計画のスパンが1週間だと、急な用事とかが入るとすぐに計画がつまづいてしまいますから、2週間ごとの柔軟な計画を立てましょう。
次に、初めは保護者が計画を立て、徐々に子どもに計画を立てさせるようにしましょう。
家庭学習の計画を立てると、それが子どもと保護者の「約束」のようなものになります。しかし、子どもがいつも計画通りに行動するとは限りません。
このとき、保護者が「約束なんだからやんなきゃダメじゃない!」と叱ってしまうと、子どもは反発して、計画そのものが台無しになってしまいます。
つまり、親が学習計画を作ってしまうと、それは「約束」ではなく「命令」になってしまうんですね。
ですから、徐々に子ども自身に学習計画を立てさせて、保護者や先生はその計画がうまく長続きするようにサポートするようにしたほうがいいんです。
最後に、子どもが学習計画を実行したら、子どもにフィードバックしましょう。
【見本】を見ていただくと、3つのフィードバックがあることにお気づきだと思います。
- 1つ目は、実行できたところには「花マル」をつけてあげること。
- 2つ目は、家庭学習を実行した時間帯に無理がなかったかどうかをチェックすること。
- 3つ目は、子ども自身に総合評価(A,B,C)をさせることで、自分自身を客観的に見つめさせること。
これらのフィードバックは、あくまで子どもを励ますためにするものですから、喧嘩の材料にならないようにしてください。
家庭学習計画は「これから主義」への転換点
分かったわ。でも、家庭学習計画表は、いつも、絶対に作らなければいけないの?
理想を言えば、家庭学習計画表は、小学4年生くらいから、楽しみながら作る習慣をつけるといいと思います。「段取り力」は「学力」の重要な一部ですから。
ただ、その習慣がない人は、成績が伸び悩んだときや、学習意欲が減退したときに家庭学習計画を作り始めた方がいいと思います。親子で「やった・やらない論争」は生産的ではないからです。
家庭学習の計画がない子どもの思考は「これまで主義」に支配されていることが多いです。「もうやったからいいでしょ!」と。
でも、成長する子どもはそうではありません。成長する子どもの思考は、次に何をやらなければならないかという「これから主義」です。
家庭学習計画は、この「これから主義」への転換点になります。
「これから主義」の視点を持つようなると、勉強以外の活動にも生かせて、まさに中学受験のメリットといえると思います。
中学受験のメリット⑥ 質の高い教育や進路選択の幅の拡大
中学受験での成功は、質の高い教育環境、自己管理能力の向上、モチベーションの維持、充実した友人関係の形成、進路選択の幅の拡大、そして自信の醸成にあります。
目標に向かって努力する重要性を理解し、同じ目標を持つ仲間との刺激的な交流を通じて成長を促します。名門校への入学は、高校や大学への進学選択肢を広げると共に、自信を強化しますので、中学受験のメリットといえます。
しかし、これらのメリットは個々の状況によって異なり、家族の価値観や目標、子供の性格や学習スタイルに基づいた慎重な判断が必要です。
中学受験をする理由
中学受験のメリットって、やっぱり、将来高い収入を得たり、満足いく職業につけるってことですよね!
そうですね。
「小学生に聞いた中学受験の理由」という記事によれば、大都市圏では、公立中学に進学することのデメリットも中学受験をする理由になってますね。
いずれにしても、中学受験者は年々上昇しています。
自分の子どもに合った学校選び
でも、自分の子どもに合った学校選び、って難しい…
ですよね。一般的には、次のような観点を総合的に見て決めてますよ。
- 学校の教育方針: 自分や家族の教育観と合致するかどうか。
- カリキュラムの内容: 学びたい分野や教科が重点的に扱われているか。
- 進学実績: 希望する高校や大学への進学実績があるか。
- 学校の規模と環境: 大規模校か少人数制か、都会か郊外かなど、生活環境に合っているか。
- クラブ活動や特別活動: 自分の興味や才能を伸ばせる活動があるか。
- 学費と経済的負担: 家族の経済状況に合わせた学費設定か。
- 通学の利便性: 自宅からの通学距離や時間、交通手段。
- 校風と生徒の雰囲気: 自分に合った校風か、生徒間の雰囲気は良好か。
- 教育サポート体制: 個別指導や補習、カウンセリングなどのサポートが充実しているか。
- 将来のキャリア支援: 大学進学後のキャリア支援や職業教育の提供があるか。
これらの基準を総合的に考慮し、子どもの性格や興味、強みと合った学校を選ぶことが大切です。また、家族と十分に話し合い、子ども自身の意見を尊重することも重要です。
じゃあ、子どもの強みとか、子どもの適性というか、どんなことに向いているかを知る方法はありますか?
難しい質問ですね。ただ、子どもの職業適性検査とか、学校相性診断は、下のサイトでやっていますよ。参考のために一度試してみてはいかがでしょうか。
これらはあくまで参考ですから、気になる学校があったら1校でも多く、見学にいくのがいいですね。保護者の目が一番確かですから。
ちなみに、このブログでは、いろいろな学校紹介の記事をたくさん書いていきますよ!
中学受験のメリット⑦ 自己認識の深化
自分の強みや弱みを理解し、それに基づいて成長することは、中学受験の大きなメリットの一つです。これは、自己認識を深め、個人的な成長と自己改善の礎となります。
中学受験で第1志望校に合格する人の割合
中学受験で第1志望校に合格する受験生の割合はどのくらいなんですか?
いろんなデータがあって正確なことは分かりませんが、およそ3割の受験生が第1志望校に合格する、と言われています。
逆に言うと、中学受験で第1志望に合格できない受験生は全体の7割程度で、全滅するケースもあります。
これらのケースは結果だけみれば不本意なんですけれども、そうした場合でも、受験直前までがんばったんです。
中学受験で志望校に合格できればそれに越したことはないけど、そうでなくても、中学受験のメリット、つまり、中学受験の経験は将来に生かせるということに目を向けることが大事ですね。
目標達成への道のりは人それぞれ
実は私は小学生のとき、中学受験をしました。通っていた塾は四谷大塚。開成と駒場東邦を受けたけど、全滅。友だちが開成に受かっていて、悔しかったな~。結局、地元の公立中学に進学しましたよ。
そうだったんですか。それはそれは。じゃあ、高校はどこに進学したんですか?
えっ、そんなこと聞くの?
いいじゃないですか、昔のことだし。
ぐいぐいくるね~(汗)
高校受験では、当時「秀英教育センター(1998年に撤退)」という進学塾に通っていて、筑駒と慶應義塾を受験しましたが、これもまた全滅!結局、地元の都立国立高校に進学しました。
国私立に落ちたときは、さすがに母親がガッカリしていた様子だったので、申し訳なかったですね。
目に浮かぶわ。お母さんかわいそう~
ボクもかわいそうなんだけど…
でもね、大学受験ではストレートで慶應経済に入ったんだ。高校受験では慶應に落ちたけど、見返してやりたいって思ったんだね。
へえ~、そうなんですか。なんで突破できたんですか?
よく聞いてくれましたね! ボクの場合は、次のような戦略を立てました。
- 高2の秋から受験対策を本格始動させる。
- 何科目も勉強できるほど頭よくないから、国公立はムリ。英語と数学で勝負できる慶應をターゲットにする。
- 代ゼミの授業に出てみたけど、歯が立たない。模試を受けてもどうせダメ。模試は自信がついたときに受ければいい。
- まずは基本書を自分でイチからやり直そう。英語は「英文解釈教室」、数学は「寺田文行の鉄則(今は廃刊)」で行くことに決定。
- 勉強は基本嫌いなので、勉強漬けはムリ。高3の秋まで部活は続ける。
高3の夏までに計画的に基本書を6回くらい徹底的に潰して、高3の夏から模試を受け、十分でなければZ会の問題で演習をする。後は、高3の秋から過去問をつぶす。こんな感じでやりました。
人それぞれ、いろいろなアプローチがあるのね。
そう、みなさんにお伝えしたいことは「目標達成への道のりは人それぞれ」ということ。
私みたいに、中学受験も高校受験も失敗すれば、否応なしに、自分に向き合って、今の自分なら現実的に「〇〇ができて、〇〇はできない」と考えざるを得なくなる。
あと、「自分にはできない!」と考えてしまうことがありますが、自分の能力を疑ってはいけません。「できない」のではなく「遅れているだけ」ということがあるからです。
人生の中では、過去も未来も、人はみんな本当にいっぱいいっぱい失敗するけれども、失敗を失敗のままで終わらせない勇気が大事だと思います。
なるほど。人生経験は、受験だけでなく、恋愛や就職と、続いていきますものね。中学受験のメリットは先々の人生の中で生かされる、ってことね。
「日本柔道の論点(山口香 著)」という本に、次のようなことが書かれてました。ちょっと長いけど、引用しますね
オリンピックや世界選手権の短距離走で活躍している人の多くは、小・中学校などの徒競走が一番ではないという。
その時代、一番だった人間は小さい頃から「足が速い」と言われて育ち、才能だけでゴールテープを最初に切っていく。それが高校進学後、才能のある人が集まると勝てなくなっていく。そうなるとそれまでに負けた経験がないだけに、嫌になってやめてしまうという。負けたことによって努力が足りなかったことを知り、さらに頑張ろうとは思わないそうである。
ある意味、こういったことがエリートの弱点であろう。勝つことから学ぶことは意外に少ないのだ。負けたことから多くを学び、負け続けないことが重要なのである。
人生には良いときもあれば悪いときもある。うまくいかない時期にこそ、我慢して知恵とアイデアを絞り出して乗り切れるかどうかが勝負である。
エリートが競技の第一線を退いて社会に出たときに、スポーツ以外のことに一から取り組んでいくことは相当の忍耐力が要求される。エリートほど自分のできないものにぶつかったときはもろい。
できなかった人間はできなくて当たり前の人生を送ってきているので、意外に打たれ強い。周りの目も気にならない。
負けるとか、できない、ということは、成長するチャンスであって、それを乗り越えれば、自分の人生にとって大きなメリットになるってことね。
中学受験のメリットって、奥が深いわ!
その通りだと思います。
今日は長い話に付き合っていただいて、ありがとうございました!
いえいえ、こちらこそありがとうございました。分からないことがあったら、また質問しますね。